トトロは1993年に米国でごく短期間劇場公開されました。上映館も宣伝も少なく、あまり話題になりませんでしたが、その後FOXによりビデオ発売され、根強い人気を得ました。評論家にもおおむね好評で(公開当時はそれまでの米国でのアニメ映画の既成概念とのあまりの違いに戸惑った評論家もいたようですが)、その後のジブリアニメの米国進出の基礎を作ったといえます。主な批評はこちら。
−2000年5月30日付LA
Times紙に掲載されたアニメーションに関する記事は宮崎監督と「トトロ」に言及しました。、Charles Solomonによるこの記事は最近のアニメーション映画は技術は進歩したものの、どこかで見たようなストーリーばかりであり、それはリスクを嫌う映画製作者がこれまでにヒットしたパターンを踏襲することのみに腐心しているからだと批判しています。そして「日本の伝説的なアニメーター宮崎駿は、(こうした傾向に)影響されないストーリーテリングがいかに感動的たりうるかということを「となりのトトロ」で示している」として、「トトロ」のサツキとメイがバス停でトトロに出会うシーンを紹介し、「これはほんの数ダースのセリフしかない静かで魅惑的なシーンである。この数分間で宮崎はサツキとメイの間の絆と彼らとトトロの間の友情の深まりを描いている。バンビが凍った池の上で滑るシーンで笑ったように、自分に水を降らせるトトロを見て観客は笑う。任意にぽんと入れ込まれたギャグではなく、キャラクターの性格を反映した動きがユーモアをもたらしている。米国のアニメーター達は「トトロ」のこのシーンを誉めるが、自分たちがこのようなシーンを作ることは出来そうにないと悲しげに付け加える。こうした静かで効果的なシーンは最近の映画には嘆かわしいほど欠けている」としています。そして「最近の映画は観客(の好み)を何とか推測しようとする委員会によってストーリーが作られているように見える。これらには映画製作者がストーリーに対して抱いている情熱、ビジョンが欠けているのだ。30年代や40年代には、アニメーションとストーリーテリングをそれまで考えもつかなかった高みへと引き上げようとウォルト・ディズニーはスタッフを鼓舞した。最近では、こうしたビジョンを実現しようとするストーリーテラーは宮崎、ラセター、パーク、バード達の映画に見ることができる」としています。(訳注:ラセターは「トイストーリー」の監督、パークは「ウォレスとグルミット」の監督、バードは「アイアン・ジャイアント」の監督。)
−ハーバード大学の研究者がthe
Journal of the American Medical Association (JAMA:米国医学協会誌)
2000年5月24日号で発表した論文が「魔女の宅急便」と「となりのトトロ」に言及しています。(ハーバードのプレスリリースで論文の要約が読めます)
この研究は1937年から1999年の間に米国で公開された74のG指定(一般向け)のアニメーション映画を分析し、それらに含まれる暴力の内容と量を分析したものです。それによれば、「魔女」と「トトロ」はこのうち最も暴力の量が少ない(35秒と6秒、共に映画全体の1%以下)映画だということです。
また、論文は「2本の映画(となりのトトロと魔女の宅急便)以外の映画では、少なくとも一人の「良い」キャラクターが暴力行為に荷担している」と述べています。
−Cartoon Networkチャンネルで放映中のTVアニメ、Powerpuff Girlsの"Criss
Cross Crisis"というエピソードにトトロが出演しました(あまり似てませんが)。おそらくこのシーンを担当したアニメータか演出家がファンだったのでしょう。