世界の宮崎ファンたち
宮崎アニメと宮崎監督のファンは世界中にいます。エンタテイメント産業に関わる有名人達の中にも宮崎監督を尊敬する人は数多くいます。
海外のアニメ業界における宮崎ファン達
ディズニーのアニメーターや監督に宮崎ファンが多い事は良く知られています。ディズニーでは新人アニメーターの教育の一環として、宮崎アニメを見せているという話もあります。1
ディズニーのクリエーター達は(ディズニーに限らず、米国のアニメ関係者は)来日するとジブリを訪問します。「ムーラン」の監督のバリー・クック と トニー・バンクロフトは「ミヤザキはボクらにとって”神様”的存在」2だと述べています。 バンクロフトによれば、宮崎監督は「ディズニーのアニメーターに大きな影響を与えた」3という事で、クックは彼が宮崎監督を尊敬するのはその作品が「ディズニーとまったく違う手法を取りながらもディズニー作品と同じ感動を与えてくれるから」4だそうです。「美女と野獣」、「ノートルダムの鐘」の監督のゲイリー・トゥルースデールと カーク・ワイズもジブリを訪問し5 、特にトゥルースデイルはトトロのTシャツを着てジブリが訪問できた事がうれしくてたまらない、という雰囲気でした。 「リトル・マーメイド」、「アラジン」、「ヘラクレス」の監督のジョン・マスカーとロン・クレメンツもジブリを訪問し、特にマスカーは宮崎アニメの大ファンで宮崎監督と対談もしています。6
「ビアンカの大冒険・ゴールデンイーグルを救え!」の監督のヘンデル・ブトイは宮崎アニメの情報を求めて「アニメージュ」を読むほどの宮崎ファンで、「宮崎監督の作品には深い人間性の表現と、確固としたドラマの構築がある。それが私に感動を与えてくれる」と述べています。ブトイは宮崎監督を「もっとも偉大なアニメーター」と呼び、この映画の大鷲の飛翔シーンは宮崎アニメに影響を受けた、としています7。
ディズニーのトップアニメータであり、アリエル、ビースト、ポカホンタス、アラジン、そしてターザンの作画監督であるグレン・キーンも宮崎アニメの大ファンです。最近のディズニーキャラクターの目が大きいのは、キャラクターデザインをしたキーンが日本のアニメの影響を受けているせいだそうです8。「ムーラン」のプロダクション・デザイナーのハンス・バッカーは宮崎監督をアーティストとして尊敬している、として「彼が昔も今も私の先生である事に感謝している」と述べています9。
米国のアニメ界でもっとも有名な宮崎ファンは「トイ・ストーリー」「バグズ・ライフ」の監督でディズニー出身のジョン・ラセターでしょう。1980年に「カリオストロの城」を見て「その場で恋に落ちた」というラセターはそれ以来宮崎作品の大ファンで、「ジブリがいっぱい」LDボックスセット用に彼が書いたライナーノート では、ピクサー(「トイ・ストーリー」の制作会社)では彼をはじめアニメーター達がインスピレーションを得るために宮崎アニメを何度も見た、としています。そのため「トイ・ストーリー」は宮崎アニメの影響が随所に見られる作品となっています。ラセターはピクサーの試写室で仲間と一緒に宮崎アニメを見る事が何よりも好きだ、と言い、時には彼が感動したシーンを見せながら解説をする事もあるそうです。かれは「天空の城ラピュタは信じられないほど奥が深い。僕はこの作品を細かく研究し、大きな影響を受けた」と述べています。「バグズ・ライフ」で主人公のアリが仲間を鳥から救おうとするシーンは「ラピュタ」のティディス要塞からのシータ救出のシーンからインスピレーションを得ているそうです10。
ラセターは宮崎監督にサインしてもらったトトロのポスターを宝物にしていて、「トイ・ストーリー」のメイキング番組では、インタビューに答えるラセターの後ろにこのポスターが貼ってありました。「バグズ・ライフ」のメイキング番組では、ラセターの後ろに映るトトロのぬいぐるみを見る事が出来ます。また、「バグズ・ライフ」の共同監督のアンドリュー・スタントンも学生時代から宮崎アニメの大ファンで、ジブリを訪問した際に宮崎監督にトトロとフリック(バグズ・ライフの主役)の絵を描いてもらって大喜びでした11。
ディズニーのTVアニメシリーズ、「テイル・スピン」のプロデューサーで脚本も担当しているジム・マゴンと マーク・ザスロブも、この番組を作るときに宮崎アニメ、特に「ラピュタ」の影響を受けたそうです。12
「バットマン」や「スーパーマン」のTVアニメシリーズを制作しているワーナーにも宮崎ファンはたくさんいます。「バットマン」や「スーパーマン」のプロデューサーであり脚本家であるポール・ディニは宮崎監督を「素晴らしい」「アニメを実写の枠を超える映画監督」「驚異的」と述べています13。同じく「バットマン」や「スーパーマン」のプロデューサーでありシリーズ監督のブルース・ティムと同シリーズのアート担当のグレン・ムラカミも宮崎アニメの大ファンです14。「バットマン」シリーズの演出家であるケビン・アルティエリ は自分が演出した幾つかのエピソードで宮崎アニメのパロディ(もしくはオマージュ)をやっています。 スターログ誌のインタビューにおいて、アルティエリは尊敬する映画監督として、キューブリックやヒッチコックと共にミヤザキの名を挙げています15。
「ファンタスティック・プラネット」などで知られるフランスアニメ界の巨匠、ルネ・ラルーも宮崎作品を高く評価しています。ラルーは1995年にフランスの映画雑誌「ポジティフ」に発表した「となりのハヤオ」と題した宮崎監督へのオマージュのなかで、宮崎監督を「完璧な作家」と呼んでいます16。
海外の実写映画・TV業界における宮崎ファン
ジョージ・ルーカスは「ナウシカ」のテトがナウシカの指をかむシーンを見て「すばらしい感性」と感動し、宮崎監督に合作を持ちかけた、といわれています17。「クロノス」や「ミミック」の監督のギジェルモ・デル・トーロ は自分は「ミヤザキ映画の完全な中毒者」と述べています18。 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」や「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」の製作者であるツイ・ハークは宮崎アニメは「忘れかけていた大切な少年自体の夢や思い出を、いつも私たちの思い出させてくれる」と述べています19。彼はまた、香港で公開された「風の谷のナウシカ」(短縮版)の監修もしています。「青い凧」等で知られる中国の映画監督田荘荘もジブリを訪問して宮崎監督をはじめ、ジブリのスタッフを2日にわたって取材しています20。
「新スタートレック」以降のスタートレックシリーズのテクニカルアドバイザー及びイラストレーターのリック・スターンバックも宮崎アニメの大ファンで、「新スタートレック」に出てくるピカード船長の心臓を刺した凶暴なエイリアンNausicaanの名はナウシカからつけられています。このほか、「新スタートレック」にはトトロをはじめ、様々なアニメ関係の日本語があちこちに登場します21。スターンバックはジブリにファンレターを送って、それが今はなきジブリの公式英語サイトに掲載された事もありました。
「新スタートレック」で使用されたプロップ。「トトロ」の字が裏返しなのがご愛敬。
俳優のロビン・ウィリアムズは「もののけ姫」の事を「驚異的」「美しい」と誉めています22。 モロの声を演じるジリアン・アンダーソンは娘が「トトロ」の大ファンで23、ジコ坊役のビリー・ボブ・ソーントンは「もののけ姫は自分が1998年に見た中で一番良い映画だ」とコメントしています24。
また、スティーブン・スピルバーグは「カリオストロの城」を見て以来宮崎アニメの大ファンだ、押井アニメをはじめとする日本アニメオタクで知られるジェームス・キャメロンも宮崎ファンだ、等の噂もあります。これらはかなり信憑性が高いと思われますが、本人の言など決定的な証拠がまだないので(少なくとも私は知らないので)「噂」ということに留めておきます。
海外のコミックス業界における宮崎ファン
(すみません、工事中です)
出典
- Miyazaki Mailing Listへの投稿、1993年5月5日。なお、この英文メーリングリストにはディズニーやピクサーのアニメーターなど業界関係者も参加しています。
- TVタロウ、1998年8月号のインタビュー
- 中村健吾著「もののけ姫からホーホケキョとなりの山田君へ」徳間書店、1999.p.125
- 同上。p.125−126
- 1996年7月11日付もののけ姫制作日誌@ジブリ公式サイト及び「もののけ姫はこうして生まれた」第2巻
- スポーツニッポン1992年8月1日。ちなみに彼らが監督した「オリビアちゃんの大冒険」に時計塔の中のシーンがあるのだが、これも「カリオストロの城」に影響を受けたのでは、と言われている。
- 原田正宏「ディズニーアニメに宮崎駿の息吹きが見えた!」、「紅の豚ガイドブック」p.75、およびブトイを直接知る人からの情報。
- Miyazaki Mailing Listへの投稿。また、自身が宮崎アニメの大ファンである映画評論家のロジャー・イーバートも、映画評論TV番組の中で「トトロ」と「ターザン」のキャラクターデザインを比較し、最近のディズニーアニメがいかに日本のアニメに影響を受けているかを論じている。
- Helen McCarthy著、Hayao Miyazaki: Master of Japanese Animationのためにバッカーが寄せた推薦文。
- ニューズウィーク「シネマの20世紀」、TBSブリタニカ、1999年。p.94-96 及びMiyazaki Mailing Listへの投稿、1998年12月1日
- アニメージュ1999年3月号、p.119、1999年1月23日付山田くん制作日誌@ジブリ公式サイト
- Miyazaki Mailing Listへの投稿、1999年5月15日
- The Critical Eyeのインタビュー、1999年5月17日
- The Critical Eyeに掲載予定のインタビュー
- Starlog Platinum Edition Volume #3、p.22
- 権藤俊司「ルネ・ラルーインタピュー」、GaZo vol. 1, p. 88,
- 森卓也「宮崎駿論」、キネマ旬報増刊「宮崎駿ともののけ姫とスタジオジブリ」p.60、ただし、宮崎監督はあっさり断ったという事。
- Nausicaa.Netの管理者、Team Ghiblinkにデル・トーロが送ったメール。ちなみに用件は「ジブリがいっぱいLDボックスセットはどこで売ってるか知っていますか?」というものでした。
- 「紅の豚ガイドブック」、p.10.宮崎監督へのメッセージより
- 1996年7月6日および8日のもののけ姫制作日誌@ジブリ公式サイト
- 新スタートレックに登場するアニメ関係用語のリストはこちら。
- Civilization,June/July,1998
- もののけ姫英語版に関する記者会見で流されたビデオレター
- Animation Buyer's Guide、Summer 1999