Howl's Moving Castle〜ハウルの動く城・ファンの感想〜


最初にお断りしておきますが、これらのレポートの中にはは熱烈なジブリファンによるものもあり、マスコミの(少なくとも表面上は)「客観的」なレポートではありません。また言うまでもないことですが、映画の感想はあくまでも個人的なものであり、当然のことながら感想は人によって異なります。

以下、人によってはネタバレと思うかもしれないので、あくまで個人の責任でお読みください。



映画を見たVladimirという人は日記で以下のように述べています。

その後「ハウルの動く城」のために並んだんだが、ビデオカメラを持ってないかチェックされたのはここだけだった。パラガリレオ劇場はすぐに満席となった。我々はこれから宮崎駿の新作の世界ではじめて見ることになる、という場内放送があって、そして場内が暗くなったけど、きっと俺が興奮のあまり暗闇の中で燃えて光ってるのが見えただろうよ。

(映画の最初の)スタジオジブリのロゴに対する大きな拍手から、映画が終わった後のさらに大きな拍手までの間、何かを見逃すのが怖くてまばたきできないほどだった。それほどよかったんだ。これはダイアナ・ウィン・ジョーンズの原作だけど、映画は徹頭徹尾ミヤザキだ。美しく再現された19世紀ヨーロッパのスチームパンクの世界から、テリー・ギリアムを思いおこさせる驚くべき城、我々の眼の届かない遠くで戦うハウル、素晴らしく愉快な火の悪魔カルシファー、そして魔法で90歳に変えられた18歳の平凡な少女というメインストーリーにいたるまで、 とにかくものすごい「すげえ、すげえ、すげえ」の連続で、ジョニー・デップよりずっと感動させてくれた。エンディングの甘ったるい日本のポップソングとクレジットで、やっと我に返ったよ。ハウルはもののけ姫や千と千尋よりもっとはっきりしたハッピーエンドだけど、同じくらいい映画だ。世界中で公開されるのが待ちきれないよ。今回見れたことが誇りだね。


−DVD Timesは、ベネチアで「ハウル」を見たEddieという人のレビューを掲載しました。映画祭の模様を撮影した写真も掲載されています。

「ハウルの動く城」は間違いなく素晴らしい映画で、アニメーションがメディアとして提供できるものの最高がどんなものかを示している。俺とガールフレンドは二時間の間画面に釘付けになり、映画に飽きたり早く終わってくれればいいのになんて一度も思わなかった。たった一度見ただけだけど、正直言って「ハウルの動く城」は、「ラピュタ」を超えて俺の一番好きなジブリ映画(「紅の豚」だけはまだ見てない)になったよ。映画を好きになったのは明らかに俺たちだけじゃなかったようで、エンディングクレジットが流れると数分にわたってスタンディングオベーションがおこった。

「ハウルの動く城」はイギリスの作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズによる同じ題名の児童文学に基づき、宮崎が映画化したものだ。本はまだ読んでないので(すぐに読むつもりだけど)、どんな映画か事前に知らなかったし、そしてもちろんジブリがストーリーやキャラクターにどんな変更を加えたのかはわからない。けど、もし本が映画の素晴らしさに少しでも近いのなら、多くのファンはとても幸せだろうとだけ言っておこう。

(ストーリー紹介略)

素晴らしいシーンがたくさんありすぎて、とてもじゃないがこれというシーンを選べない。もちろん、アニメーションは一貫して素晴らしく、CGはさりげなく、けれどとてもうまく使われている。例えば、川に反射する太陽や大地を動く城の蒸気など、ちょっとしたうまい表現が大きな差を生んでいる。表題にもなっている城はそれ自体傑作で、テリー・ギリアムのもっともでたらめなアニメーションとビクトリア時代のむちゃくちゃな発明を足して二で割ったようなものに思えた。この奇怪な構造のそれぞれの部分が独立して動いてるようで、それが動きまわるだけでも本当に見ものだ。いろんな面白いキャラクターが出てるけど、俺が一番好きなのは太った喘息もちの犬、ヒンだ。ヒンは本当に面白い。この小さな動物が階段を上れなくてソフィーおばあちゃんに助けてもらうシーンは特に面白くて、みんな腹が痛くなるほど笑った。火の悪魔カルシファーも面白い生き物で、彼は割れた卵の殻を愛し、そして重要な秘密を持ってるんだ。他には、戦争中の二つの国が炎上する都市の廃墟のはるか上空で戦う激しい戦闘シーンとか、城が星の湖の岸で動きを止める美しいシーンとかがある。魔法使いハウルは、過去のジブリ映画と比べても、俺が期待していたのとはまったく違うキャラクターだったといわざるを得ない。それはもしかしたら原作のせいかもしれない。本を読んだら、宮崎のハウルに関する描写がもっとはっきりすると思う。

ありがたいことに、映画祭の規則により、「ハウルの動く城」はオリジナルの日本語音声にイタリア語と英語字幕(スクリーンの下の電光掲示板に)つきで上映された。全編を通して声の演技はトップクラスで、特に木村拓哉(これから公開されるウォン・カーウァイの2046の出演者の一人)演じるハウルがよかった。若いソフィーと老女のソフィーの声もまた素晴らしく、倍賞千恵子が両方の役を演じるという素晴らしい仕事をしている。音響効果もまた素晴らしく、特に奇怪な城の音がよかった。このそびえたつ仕掛け(城)が大地をずしんずしんと歩き回ると劇場は揺れ、ありとあらゆるエンジンやピストンが動いているのが聞こえた。音楽もまた素晴らしく、圧倒的過ぎるということもなかった。あるメロディーにちょっとだけ苛つくシーンが二つほどあったけど。映画の最後に「千と千尋」と似たスタイルの歌が流れるけど、歌っているのが同じアーティストかどうかはわからなかった。

この映画に批判すべき点がもしあるとしたら、それは最後あたりのペースがちょっとばかり速くて、まるで急いで話をまとめようとしているかのようにも思えたことだ。けれどそれは多分、二時間の間「ハウルの動く城」の素晴らしい世界に没頭した後では、この映画に終わって欲しくないと思ったからかもしれない。あと、もうちょっと説明があったらなあと思ったシーンが二つばかりあったけど、大きなネタバレなしにそのシーンを説明することは出来ない。

結論として、「ハウルの動く城」で宮崎とスタジオジブリの人たちはよくやったと言わざるを得ない。ストーリーは素晴らしく、キャラクターや(映画の)世界に住んでいる生き物達はとてもうまく造形されていて見ていて楽しい。声の演技、音響効果、音楽はほとんど完璧(ヒンのぜーぜーいう吼え声をぜひ聞いてくれ!)で、なにより、最後の数分にほんのちょっとした問題があると俺が思ったほかは、映画のペースは完璧に狙い通りだ。映画を通してつまらないところは本当に一瞬たりともない。俺の意見では、これはこれまでのところ宮崎のベストで、宮崎は年とともにますますよくなってるって証拠だね!唯一の心配は、この傑作アニメーションを俺が再び見ることが出来るのは、数ヶ月先だってことだ…。

 

以下はMiyazaki MLに投稿された、ベネチア映画祭で「ハウル」を見たML参加者の感想の抜粋翻訳です。

イタリアのMario Solinaによると、映画は原作とはかなり違うそうです。面白いギャグ(カカシと犬)あり、胸が痛くなるような感情(愛と戦争がこの映画に一貫して流れているテーマ)あり。久石さんの音楽はいつもどおり素晴らしく映像によく合っているとのこと。

イギリスのAccordGuyの第一印象は、「いい映画だが、千と千尋を最初に見た時のようにガーンとくるということはなかった」というもの。映像の質とイマジネーションはすごいが、AccorGuyが好きな魔女宅やトトロのようにはキャラに感情移入ができなかったとのこと。ただ、入場に手間取って映画の最初の10分を見逃したので、ちゃんとした評価はまだ出来ないそうです。また、過去の宮崎映画の世界観を踏襲するものが映画のあちこちに出てくる(具体的にそれが何なのかは不明)そうです。全体的には「ハウル」は素晴らしいアクション映画で、とても面白いシーンもある(あるシーンでは観客が大爆笑だった)ということでした。